後立山(新潟) 一本松山(1049m)、横前倉山(1157m)、村杉山(1172.5m)、ヨシオ山(1223m)、源太夫山(1263m)、柴倉山(1483.9m)、オッカブロ山(1480m)、相沢山(1525m)、穴見山(1070.4m) 2017年4月1〜2日  カウント:画像読み出し不能

所要時間

4/1 5:42 岡集落(明星山登山口)−−7:46 谷に入る(林道を離れる)−−8:55 920m鞍部(明星山西尾根入口)(休憩) 9:18−−10:41 一本松山(休憩) 11:01−−11:56 横前倉山−−12:47 村杉山(休憩) 13:20−−14:05 ヨシオ山−−15:11 源太夫山(幕営)

4/2 5:43 源太夫山−−6:25 柴倉山−−6:48 オッカブロ山−−7:16 相沢山(休憩) 7:34−−7:58 オッカブロ山−−8:27 柴倉山−−8:50 源太夫山(テント撤収&休憩) 10:19−−11:08 ヨシオ山−−11:43 村杉山−−12:30 横前倉山−−12:51 1068m峰(休憩) 13:37−−14:25 穴見山−−15:04 1068m峰(休憩) 15:49−−16:46 ヒヨドリ池南西920m鞍部−−16:51 950m峰−−17:15 林道−−18:06 岡集落(明星山登山口)

場所新潟県糸魚川市
年月日2017年4月1日〜2日 1泊2日幕営
天候4/1:曇後霧、雪  4/2:快晴
山行種類残雪期の山
交通手段マイカー
駐車場岡集落上部の除雪終点に駐車
登山道の有無明星山西尾根入口までは夏道があるが、以降は無し
籔の有無積雪で藪皆無
冬装備スノーシュー(必須だった)、ピッケル(ストックでもOKだった)、アイゼン(全く出番が無かった)
危険個所の有無無し
山頂の展望この時期はどの山頂も良好
GPSトラックログ
(GPX形式)
4/1に歩いた分
4/2に歩いた分
コメント岡集落から相沢山を1泊2日で往復。源太夫山で幕営。標高が低い場所では雪質の悪さに苦労、スノーシューでなかったら2週間前のDJF氏同様に途中撤退だっただろう。残雪が落ち着く前の早い時期で雪庇崩壊も藪も無く、延々と尾根直上を歩けた。ちょっと古い新雪が10cm程度積もっていて、これがラッセルの要因となった。初日は横前倉山以降はガスに突入、視界が遮られてルートファインディングに苦労する。2日目は大快晴! 昨日のガスで霧氷が発達し見事だった。オプションの穴見山追加により下山は午後6時を過ぎた


地図クリックで等倍表示
1日目のルート断面図
2日目のルート断面図


明星山登山口東側の除雪終点に駐車 明星山登山口。右の頭が赤い物体は消火栓
明星山登山口 林道入口。一般車進入禁止
林道は雪に埋もれる 林道をショートカット、斜面を登り送電線通過
古いトレース。2週間前のDJF氏のものか? 無雪期は根曲竹藪か
林道上のスキーのトレース ショートカットコースの急斜面。下りはバックで下った
林道に復帰し、以降は林道を歩く スノーシューでも沈みが大きく疲れる
明星山。写真ではなだらかに見えるがかなりの急斜面 標高650mで林道を離れて谷に入る
標高670mで谷が分かれる。右は雪が割れているので左へ 夏道に乗っているようだが積雪で雰囲気無し
谷に沿って登っていく 時々股まで落ちる悪い雪質
930m鞍部到着。たまらず休憩 一本松山へは尾根上を行かずに南を巻いた
トラバースは特にラッセルがきつく尾根上を行った方がよかったかも 一本松山山頂直下で雪庇を越えて尾根に乗る
一本松山山頂。小休止した 一本松山山頂の雪庇クラック
一本松山から見た北〜東〜南の展望。予報より天気が悪く、標高が高い所はガスがかかっている
一本松山から見た西の展望 横前倉山向けて下る
1068m峰は巻いた 標高1100m。横前倉山への登りの途中
横前倉山1130m肩でガスに突入 横前倉山山頂。平坦な地形が続く
主稜線には巨大雪庇が連続。まだ崩壊していない ガスで霧氷が発達
村杉山山頂。北側には杉が列をなしている 村杉山西側の境界標石
ヨシオ山への登り。ガスと新雪で足元の高さが分からないほど ヨシオ山山頂
源太夫山へは尾根が屈曲。高度計が頼り 南斜面の下りは踏み抜きが深い
無事に尾根に乗れた 地面がどこなのか・・・・
源太夫山山頂 源太夫山山頂南側、雪庇の影に幕営
翌朝、源太夫山山頂から幕営場所を見下ろす 源太夫山山頂
源太夫山山頂からの展望(クリックで拡大)
柴倉山への登り 霧氷で枝が垂れ下がっている
我が影 広大な尾根を登る
急斜面だが尾根が広いし雪質最高で問題なし 柴倉山山頂
柴倉山山頂からの展望(クリックで拡大)
柴倉山から見た東側の展望 柴倉山から見たマイテント
柴倉山から見た西側の展望 オッカブロ山山頂
オッカブロ山山頂からの展望(クリックで拡大)
隠れたクラックに腰まではまった オッカブロ山西側の下り。2重山稜
相沢山へも良好な雪稜が続く 相沢山山頂
相沢山山頂からの展望(クリックで拡大)
相沢山から見た東側の展望 相沢山山頂部の植生。ハイマツなど森林限界らしい
白鳥山の避難小屋。2階部分が出ている 栂海山荘は屋根の一部のみ出ている
オッカブロ山への登り返し 霧氷が落ちた跡
毛勝三山が見えた 柴倉山からの下り
テント到着 撤収完了
ヨシオ山へ向かう 源太夫山〜ヨシオ山をつなぐ尾根
沈みが大きいのが昨日の足跡 ヨシオ山山頂
ヨシオ山山頂からの展望(クリックで拡大)
ヨシオ山から見た黒姫山〜村杉山
ヨシオ山を村杉山方面に下る 1160m峰北東側の1150m鞍部から村杉山方向
村杉山山頂 村杉山から東方向を見ている
横前倉山までもなだらかな稜線が続く 横前倉山山頂
横前倉山からの展望(クリックで拡大)
横前倉山北側肩から見た北〜東の展望
1068m峰。大ザックをデポして穴見山に向かう 1068m峰から見た穴見山
1068m峰からの下りは雪庇が連続 意外に藪が薄いのかも
目印 トラバースはラッセルがきつい
ブナ林が広がる これが穴見山
雪が緩くカモシカもラッセル 山頂直下は急斜面
穴見山山頂
穴見山山頂からの展望(クリックで拡大)
1068m峰に戻る 青海市街地
一本松山山頂 東斜面は雪が締まっていない
930m鞍部付近。複雑地形で読図困難 1022m峰を南から巻く
ヒヨドリ池は雪の下 ヒヨドリ池の950m峰
最初の谷は下らずに尾根を一つ越えて往路の谷へ 往路の谷。自分の足跡が残る
林道に到着 カモシカに遭遇
夕暮れの雨飾山 今シーズン初めての熊の足跡
明星山登山口。明るいうちに到着 こんな山里にも猫が


 後立山最北部の犬ヶ岳から東へ長い尾根が延びていて、地形図に山名が記載された山がいくつも存在する。東から明星山、一本松山、穴見山、横前倉山、村杉岳、ヨシオ山、源太夫山、柴倉山だ。これに日本山名事典記載のオッカブロ山と相沢山が西へと続き、相沢山が西端となる。

 この尾根には登山道は明星山以外は無く、地域的、標高的に考えれば笹藪か根曲がり潅木藪で間違いないだろう。ある程度標高が低い場所は無雪期でもいけそうだが犬ヶ岳近くはおそらく歯が立たず、残雪期に狙うのが常識的な判断だろう。

 残雪期の起点はアプローチの都合上、小滝川下流の岡集落しかないだろう。可能ならば周回ルートにしたいが、その場合は往路か復路で小滝川沿いの長い林道歩きが必要となる。この時期の林道は雪に埋もれて稜線歩きより危険なことは過去の経験で承知しており、今回はリスクを避けて尾根上を往復することにした。その代わり、延々とテントを担がないで途中で幕営し、相沢山を軽装で往復が可能となる。時間と体力が余れば北に飛び出したオプションの穴見山にも立ち寄れるだろう。

 金曜日は南岸低気圧で南は雨、雪だったが長野北部や新潟は影響が少なく、大して新雪は積もらないと予想した。天気予報では週末の新潟上越地方は晴れであり、テントを担いで出向くのにはチャンスだった。ただし、残雪期にしては早い時期で雪の締まりはあまり期待できない。2週間前はDJF氏が同じ場所を目指したが、雪の状態の悪さに明星山往復に格下げになった経緯がある。あれから2週間だが本格的な暖かさはまだで、日中の雪解けが期待できないので雪質も期待できないわけだ。ワカンではなくスノーシューを準備する。

 久しぶりの幕営装備で準備に手間取り、いつもより1時間半遅れで出発。しかし長野から小滝まで一般道で2時間弱しかかからない。関東からだと地の果てに思える地も近くなった。岡集落に入って最後の民家前を100mほど進んだところで除雪終点。ここなら駐車しても迷惑はかからない場所だ。4時間半ほどの仮眠。長野市内では雪が舞っていたが、ここまで北上すると星が出ていた。

 翌朝、残念ながら星は見えなくなっていたが天気予報を信じて出発。住民に怪しまれないよう、車のフロントガラスに行き先、日程を書いた紙を置いておく。冬装備を含めて総重量は18kg程度か。最近は日帰りばかりだったので荷が重く感じる。気温は0℃と高めだ。

 明星山登山口には雪国らしい背の高い消火栓が目印。民家を過ぎると林道だが、入口には車止めの鎖があった。今は雪で入れないからか鎖は開放されていたが、この先一般車進入禁止の看板があった。

 少しの間だけつぼ足で歩いてみたが、気温が高いため雪の締まりは皆無で潜ること。すぐにスノーシューを装着した。これでも重い雪がコンスタントに足首まで潜るので足取りは重い。今日はどこまで行けるだろうか。まさか私も明星山で終わりなんてことは・・・林道の雪の上には古い足跡があったが、2週間前のDJF氏のものかは定かではない。今の時期の雪解けペースなら2週間前の形跡が残っていても不思議ではない。

 林道はウネウネして遠回りなので斜面直登へ。杉の植林帯の中に立ち枯れた落葉樹の列があり、そこを登っていった。そして林道に合流し、左手の尾根を上がるとスキーの跡に出くわした。おそらく先の足跡よりは新しいと思われる。スキー跡は林道の途中まで追跡可能だった。再び林道に出る前に雪の急斜面を攀じ登るが、登りなら場所を選べばスノーシューでも問題なかった。

 再び林道に出てからは横移動が長いのでそのまま林道歩き。古い足跡は新雪に埋もれながらもまだ追跡可能。もしDJF氏の足跡なら谷筋に沿って明星山西尾根まで続くはず。ただ、明星山登山者は他にもいそうな気がするので別人かもしれないが。林道歩きでの雪質もきつく、緩い雪で足首まで埋もれながら進んでいく。カモシカの足跡も踏み抜きが深く、苦労しているようだ。

 いつのまにか薄い足跡が消えるが林道らしき筋をそのまま進むと林道が下りになったので適当に上に進むと別の林道に出くわし、再び古い足跡に合流した。そして左に入る顕著な谷が登場、この右岸側に明星山登山道があるはずだが、積雪のせいか標識等は見当たらなかった。そして足跡の主はこの谷へ入っている。おそらくDJF氏の足跡に間違いないだろう。ちょっとだけ心強いが、鞍部まではマクロな地形で考えればこの谷に沿って登ればいいので氏の足跡を忠実に辿る必要は無いし、そもそもかなり薄く部分的には判別不能なので歩きやすい部分を適当に上がっていく。ただし雪質はどこも変わらず、逆に高度が上がると「2段階踏み抜き化」し、体重をかけるともう1段沈むようになって進行速度が大幅に低下し体力消耗が激しい。こりゃ、DJF氏のように途中撤退か?と心配になってくるが、とにかく行けるところまで行くつもりだ。

 標高670mで沢が別れる場所は右は流れが出ていたので左を進む。この後は流れが出た場所はなく谷の凹みを延々と登っていく。たまにブナの幹に赤ペイントが表れるので、ほぼ夏道上を歩いていることが分かった。もうすぐ鞍部というところで谷が狭まって右岸側が雪庇が張り出し、谷の先が少し不安になってきたので右岸側の台地状に出る。こちらは歩きやすく(雪質は相変わらずだが)、登り上げたところが920m鞍部だった。

 明星山登山道の案内でもあるかと思ったら何も見当たらない。ここまで来ると古い足跡は全く判別できない。出発から3時間以上経過したので休憩。僅かに風があるので窪地で休む。天気予報と違って曇り空のままで、西に見える後立山に続く高い稜線はガスの中に入っていた。まさかこれから行く場所もガスの中じゃないよなぁ・・。

 出発。時間はまだあるのでとにかく行けるところまで行くことにする。今日中にヨシオ山まで行けば明日は軽装で相沢山を往復することが可能だろう。今の時期は午後6時過ぎまで明るいので行動時間は長い。

 この先の地形は複雑で余分なピークもあるので等高線に沿って南を巻くことにした。しかし尾根筋よりも斜面の方が雪質のたちが悪く、重い雪に脛まで潜る。これならトラバースで距離が長くなるより、標高差があっても最短距離で突っ切った方がいいのではとの判断に傾き途中で谷を目指して下ったが、意外に大きく下るので途中でまた横移動。尾根にいないので読図が非常に困難で、大きな目印を頼りに地形を読むが、ここで明星山を1020m峰と勘違いしてしまい、一本松山東鞍部を見逃して迂回してしまった。ただでさえ雪質が悪く距離が伸びると大幅に体力消耗するのに・・・・。

 気付いてからは方向修正、一本松山南東尾根を登っていく。尾根筋の雪質は斜面より格段によく、潜るのは足首までだし体重をかけてもそれ以上は沈まない場面が劇的に増えた。920m鞍部から素直に尾根上を歩いた方が楽だったかもしれない。

 最後は小規模な雪庇を乗り越えて主尾根に達し、雪庇を辿ってすぐに一本松山山頂に到着。山頂も雪庇が発達しているが、まさに山頂にクラックが入っていた。雪の下に見えているのは潅木藪。今の時期は障害物は皆無だ。まだ先は長いのでここでも小休止。どうも天候は徐々に悪化しているようで、黒姫山は既に雲で見えないし、これから向かう横前倉山は雲スレスレだ。気温は約0℃、ガスに入ったらえびの尻尾ができそうだ。

 次の横前倉山への尾根はまだ見えているので読図不要、雪稜を下っていく。まだ残雪期としては早いため、大型連休中で見られるような雪庇が崩壊して落ちてしまい藪尾根を歩く場面は皆無だ。これで雪が締まっていれば言うことが無いのだが、スノーシューでもコンスタントに足首まで沈み続ける。1068m峰は面倒なので南を巻いたが、これまた雪質が悪くて苦労する。南向き斜面なので比較的雪の締まりはいいはずなのだが。特に今日は雲って日差しが無いし。

 巻き終わって尾根に復帰すると再び足首程度の潜り方に軽減。スピードアップする。横前倉山直下の登りは尾根がバラけて急な登りだが、スノーシューは食いつきがいいので問題なく登れる。これが新雪が降った直後だと弱層で滑りまくってピッケルが無いと登れなくなる。

 1130m肩に到着、既に周囲はガスに覆われて視界は50m程度。周囲が見えないのでどこが山頂なのか判断できない。こんなときにはGPSの出番で、地形図に予め記入しておいた山頂の緯度経度をGPSに打ち込んで残距離を確認しながら雪庇に覆われた平坦な稜線を進み、GPSの示す山頂に到着。しかしここも雪庇に覆われ平坦で山頂っぽくない。村杉山までなだらかな稜線が続くのでずっとこんな感じだろうか。これだとGPSが無いと次の村杉山も山頂がどこなのか分からないだろう。

 まだ疲労はそれほどではないので霧の中を進む。ガスが濃くなり弱いながら雪も降り始めた。まさか積もらないだろうな。これに新雪が乗ってさらなるラッセルはご免こうむる。下界の天気は分からないが、山の天気は残念ながら晴れではなかった。気温は朝より若干下がって-2℃。この日は夜までずっとこの気温だった。

 ガスに巻かれて展望が無いので淡々と雪稜を歩くだけ。主尾根は太くて村杉山の西までは騙されやすい屈曲も無いので、視界が無くてもルートに不安は無い。1164m峰を越えてなおもなだらかな尾根を進み続け、尾根北側に杉が見られるようになると村杉山は近い。村杉山山頂もほとんど高低差が無く平坦な稜線の一角で山頂の雰囲気は皆無でGPSが指し示すだけ。ガスに巻かれて展望皆無。ここで休憩を取る。ちょうど雪庇がうねった凹みで北寄りの風を防げたので、そこに銀マットを広げて横になった。-2℃で日差しが無い状態では気持ちよくは寝られない。日差しさえあれば-5℃でも体感温度は快適なのだが。

 さて、まだ時間はあるので先に進む。目標は源太夫山だ。それより先は登りがきつくなり、また大ザックを背負って逆戻りは効率が悪いので源太夫山が順当な幕営場所だろう。ここまで進めば翌日は相沢山往復がかなり楽になる。問題はヨシオ山西側の尾根屈曲点。間違いなく視界は無く南にあるはずの尾根の続きは見えないだろう。私のGPSは地図表示機能が無いので高度計を信用するしかない。その前に村杉山西側の1160mピークで右に曲がるのを忘れずに。

 休憩を終えて出発。相変わらずガスが濃い。新雪で雪面の汚れも無いし、同じ白色のガスが出ていて足元の雪面までの距離感が麻痺して非常に歩きにくい。なだらかなピークを越えた先に明瞭な鞍部があり、これが尾根分岐となる1160m峰に違いない。主尾根のように見えるのは南へ派生する枝尾根で、主尾根は右に曲がるもの。方位磁石で確認できたので安心して下る。雪庇が左側にできているので方向も尾根の太さも間違い無し。

 鞍部から登りにかかるが相変わらずガスで先が見えず、目的地までの距離が目視できないので精神的に苦しいが、登りではルートに迷う心配は無いので気は楽だ。残雪期としてはまだ早い時期で稜線上の雪庇は全く崩れていないので、変な迂回をしたり藪尾根に突っ込んだりする必要は無かった。ただし、雪庇の端は踏み抜きの危険があるので、雪庇の状況を見て歩く場所は考える。

 やがてヨシオ山に到着。ここは割と顕著なピークで分かりやすい。人名のような山名だが由来は不明。この先の源太夫山も人名と思われるが。ヨシオ山もガスで視界皆無であった。この雪質、天候で初日でこの辺まで進めれば御の字だが、まだ時間も体力もあるので先に進むことにする。そうすれば明日の行動が楽になるし、オプションの穴見山も加えられるかもしれない。

 ヨシオ山から源太夫山へ繋がる尾根は途中で屈曲しているので要注意だ。今日のようなガスって先が見えない状況ではなおさらで、山頂で高度計を校正してから下り始める。そして標高1170m付近で尾根を離れて左の斜面へ入る。ここは何となく尾根が先に続いていそうな微小尾根に見える地形で、方位磁石を見ながら慎重に下っていく。結構な斜度で雪の状態は悪く、スノーシューでもズボズボ潜って盛大な足跡を残していく。

 尾根の芯を外して西に寄り過ぎたように感じたので針路変更、そのすぐあとでガスの先に明瞭な尾根が登場、無事に「着地」できたようだ。これで源太夫山まではもう心配な個所は無いだろう。唯一の気がかりはいい幕営場所があるかどうか。それほど強くはないが北寄りの風が吹き付けているので、これが避けられる場所にしたい。源太夫山まで進むことにしたのはこの点も考慮してで、山頂西側は緩やかな地形が広がっていて、どこかに雪庇がうねった影があると予想したのだった。さて、この予想が当たるかどうか。本当はスコップを持参すればいいのだが必需品というほどではなく、重さは最低でも300gはあるので私にとってはぜいたく品だ。欲しいと思いつつも購入を思いとどまっている。

 ガスで視界が無い中を緩やかに登って平坦な場所が源太夫山山頂だった。ここもガスに巻かれて周囲の状況が見えないので、GPSの表示で山頂と分かるような場所だった。巨大雪庇が続くが山頂から南東に尾根が張り出していて、雪庇直下に平坦地があった。ここだけは雪庇は垂直ではないので下ることができ、北寄りの風をシャットアウトで幕営に最適だった。今日の行動はここで打ち切り、雪庇を下って雪を均してテント設営。雪が降ったままだが雨と違って濡れないので助かる。登山靴も今日は気温が低いので雪が溶けずほとんど濡れていないのはありがたい。風向きが変わらないとも限らないので張綱もしっかりと。よく見ると降っているのは雪というより細かな氷の粒だった。勢いは弱く、この分なら明日の朝は新雪ラッセルで悩まされることはなさそうだ。問題はガスが晴れるかどうかだ。

 テント設営後は水作り。今日はガスの量に余裕があるので盛大に使って大丈夫。いつもなら日光の熱が利用できるが今日はダメだ。3リットルほど雪を溶かした。新雪は20cmくらい積もっているのでゴミの無いきれいな水を得られた。

 あとは酒を飲んで寝るだけ。ラジオの天気予報では北陸は明日は晴れ、朝夕曇りとのことで、基本的には今日よりはいいらしい。朝夕の曇りがちょっと気になるが。もしこのまま天気が回復しなければ、柴倉山まで足を伸ばすがその先のオッカブロ山、相沢山は割愛するつもりだ。柴倉山は地形図記載なので優先して登りたいと思ったわけだ。

 新調したエアマットに冬用シュラフ、多量の防寒着のおかげで明け方を除いて寒くはなかった。夜間もガスが出ていてその間は気温は昼間と同じ-2℃だったが、明け方になってガスが晴れてからは気温が下がって-6℃になり、寒さを感じたのはこの時間帯だった。防寒装備の一環として非常用防寒具に使われている寝袋のようなアルミ蒸着の巨大ポリエチレン袋をシュラフカバー代わりに使ってみたが、通気性皆無のため自分の吐き出す息に含まれる水蒸気が内部で凍り付いて凄いことになっていた。残念ながら通気性が無い素材は寝具として使えないようだ。

 腕時計のアラームに気付かずに4時半に目が覚めて外を見ると、夜中のガスが晴れて満天の星空! これはもう相沢山まで行くこと決定だ。急いで飯を食って出発準備。樹林が切れた場所ではこの時期は朝5時過ぎからライト無しで行動可能だった。昨夜の雪はほとんど積もっておらず、外に出しっぱなしのピッケルはほとんど雪は付いていなかった。昨日は靴が濡れなかったおかげで靴の凍結も無く、靴紐が針金のようにカチカチに凍ることもなかった。雪質は昨日と比較して格段に良くなったが、この先は状態不明のため最初からスノーシューを装着した。

 雪庇を登って尾根に出ると真正面には柴倉山。延々と雪の稜線が続いていて快適に登れそうだ。左手の尾根は赤禿山から五輪山。聖山が小さく尖って見えているのに対して黒負山、五輪山はなだらかだ。今日はスノーシューの刃が沈むだけの快適な雪質で足跡は僅かしか残らない。これも-6℃の冷え込みのおかげだろう。昨日からこの雪質なら柴倉山まで達しただろうか。周囲のブナは皆見事な霧氷で真白。昨日の天候が悪かったからこその光景で感動的。先日の天狗岳も良かったが今回は確実にそれを上回る光景だ。

 柴倉山への登りは広大な斜面。傾斜は急だが痩せ尾根ではないので恐怖感は無いし、スノーシューで登れる傾斜なのでマシな部類だろう。ここでもほとんど潜らず快適な雪面だった。

 肩に乗って横移動で広大な柴倉山山頂に到着。何mの雪庇に覆われているのか分からないが、無雪期よりもかなり高くなっているだろう。ここまで来ると台形の犬ヶ岳が近い。肉眼では栂海山荘は分からなかったが「写真判定」したら屋根の一部のみ雪から顔を出していた。あれで壊れない造りなのだから凄い。白鳥山も見えていたがこちらの避難小屋は見ていて、写真を見ると1階は雪の下だが2階は出ていて出入り可能だろう。

 柴倉山西側の1490m峰か快適な雪質の緩やかで広い尾根を下り、1457m峰を越えてこれまた広大な尾根を登り詰めて東西に長い尖った雪庇がオッカブロ山最高点だった。ただし明瞭な最高点ではなく周囲は同じような高さの平坦地でGPSが指示した場所。ここは地形図記載の山ではなく日本山名事典記載の山。振り向けば自分が残した足跡が一直線に延びる。西を見れば相沢山は鞍部を挟んで目の前だ。あそこまで快適な雪稜が続くそうだ。

 オッカブロ山西の肩から1400m鞍部に下るが、尾根直上は霧氷に覆われた背の高いブナで覆われ、その中に突っ込むと頭から氷を被りそうなので北側を迂回、鞍部は二重山稜になっているのでこれでも無駄は生じない。

 2重山稜が合流する鞍部から今度は少し痩せた稜線を登っていく。痩せたと言っても今までと比較しての話で危険個所は無い。相沢山山頂が近づくと今までは見られなかったハイマツなどの森林限界の植生が雪から顔を出していた。ということはここの積雪は僅かということ。風で雪が飛ばされやすい場所なのだろう。そして相沢山山頂に到着。

 ここは東西に細長い山頂で尖った雪庇が最高点だった。目の前には犬ヶ岳。この時期なら1時間くらいで到着できそうだが往復で2時間。岡集落までのコースを考えると下山時には真っ暗になってしまう可能性がある。それに犬ヶ岳は既に登った山であるし、尾根を繋げるよりも穴見山をオプションとして加える方が魅力的だ。ただし、穴見山に立ち寄った場合も下山で暗くならないか心配ではある。北寄りの風を避けて休憩。まだまだ快晴の空が続く。この分では顔が日焼けするので今期2度目の日焼け止めを顔と耳に塗った。

 帰りは往路を戻る。昨日と違って視界はばっちりなので何の問題も無い。気温は上がってきたがまだ雪は緩んでおらず、スノーシューなら踏み抜き皆無だった。ただし、霧氷は日差しを浴びて崩壊が始まっていて、日当たりのいい場所はすっかり白さを失っていた。

 源太夫山のテントに到着し大休止しつつ短時間だが荷物の虫干し。ドピーカンで短時間でもシュラフは乾きそうだ。テントの露もほぼ乾いたが床面の角だけは帰ってから乾かそう。帰りの時間を考えるとあまりのんびりもしていられないが、ザックに横になったら寝てしまった。その分疲労も抜けただろうから休憩間隔を長く取るか。できれば穴見山分岐の1068m峰まで歩きたい。

 大ザックを背負って雪庇を登って源太夫山に4たび立ち、昨日の自分のトレースを辿って下山開始。かなり日は高くなったが雪の状態は昨日よりまだ良く、昨日のトレースよりも沈まない。日当たりはいいが意外に気温は上がっていないのかもしれない。昨日は視界不良で不安だったヨシオ山へ続く屈曲した尾根も今日は丸見え。昨日のトレースを辿ったが、我ながらかなりの正確さで尾根中心部を辿っていたのには驚いた。ただし、これは自分の能力の結果ではなく高度計の正確さのおかげだが。

 ヨシオ山から見る村杉山、横前倉山はどこがピークなのか分からない、同じような高さが続く尾根である。山頂同定には苦労するがアップダウンが少ないので歩きには助かる。村杉山西側ピークに上がれば横移動の始まりで、北側に杉の生える村杉山を通過、小さなピークをいくつか越えて大きく下る手前が横前倉山山頂。ここで休もうかとも思ったが、この先の1068m峰まで頑張ることにする。

 横前倉山先の肩の下りは急であるが、スノーシューのまま半分滑りながら下っていく。こういうときにピッケルが役に立つ。さすがにもう雪が緩んできて、新雪と古い雪の間の弱層を境にしてスノーシューが乗った表面の新雪ごと滑るのであった。

 1068m峰は往路では巻いたが帰りは立ち寄る。時刻はもうお昼を過ぎていて穴見山を往復するといよいよ下山が暗い時間帯に入りそうだが、体力的にはまだ余裕がある。ここまで来たのだから穴見山を取りこぼしたくないとの思いが強く足を延ばすことにした。その前に大休止。山頂より南側は雪が凹んで北風を防いでくれるので休憩にちょうど良かった。

 さあ、軽装で穴見山に向かおう。往復2時間は無理でも3時間まではかからないと予想した。早朝のような雪がよく締まった状態ならもっと早いだろうが、穴見山は南向きの尾根を登るので雪の緩み方はかなり進んでいるだろう。

 最初は緩やかな雪庇の尾根を下っていき、やがて鞍部へと高度を80mほど落とす。その先は小さなピークがいくつかあって面倒なので990m峰は西側斜面を巻いてみたが、雪の緩みは尾根上の比ではなくラッセル地獄になってしまった。これなら素直に尾根直上を歩いた方が良かったかも。その後の微小ピークは尾根上を進んだ。20mくらいの短距離だったが雪が溶けて地面が出ているところがあり、笹に覆われているかと思ったら藪は皆無で落ち葉に覆われた地面だったので、もしかしたらこの付近なら無雪期でも登れるのかもしれない。

 穴見山本体への登りは最後は尾根がバラけた急斜面で、緩んだ雪で足元が滑るので僅かな立ち木やピッケルを動員する。気温が低い時間ならアイゼンでサクサク登れるだろうに。この急斜面とは対照的に山頂は丸く平らな平坦な場所だった。立ち木もなく大展望で、北側の青海黒姫山がでかい。先ほどまで近かった明星山はちょっと遠くなった。時間に余裕が無いので写真撮影だけして踵を返した。

 1068m峰まで戻ってから大休止。この後は下山まで無休憩の予定なのでたっぷりと休む。上空は雲が出てきたが天候が悪化するような暗い雲ではなく薄雲で心配はないだろう。再び大ザックを背負って一本松山に向かう。先ほどと昨日の経験でピークをトラバースする方がラッセルがきついのは確実なので、大きくないピークは尾根上を進むことにした。

 一本松山の山頂は雪庇の亀裂が入ったまま。ここを北上すると千丈峰に達するが、これは宿題にしよう。地図を見る限りでは東側から攻めるのがアプローチを考慮すると良さそうだ。

 一本松山の東鞍部は地形が複雑で、尾根筋を正直に下っていくと南に行き過ぎるために下方に見える平原向けてズボズボ潜る雪の急斜面を下ったが、白さで見えなかったが谷が横断している。このまま直進すると標高差を少し損するので右へとトラバースしてみたが、これまたラッセルが厳しくて諦めて下に向かう。浅い谷を越えてこれまた僅かな高まりの尾根に乗ると一本松山東鞍部だが、同じような高さの尾根が続いて地形がはっきりしない。

 次のピークは1022m峰だが、さすがにこの標高差は上り下りするのはトラバースでのラッセルと比較しても無駄が多いと判断、ピーク南側の緩斜面をトラバース開始。予想通りに柔雪に苦労するが、標高差90mを登って下るよりはマシだろう。小尾根を越えて平坦な凹地を横断、その先の小鞍部で再び尾根に乗る。東側はヒヨドリ池のある平坦地だが、一面の残雪で池の姿はなかった。

 この先もまた複雑地形で、疲れた脳みそで正確な読図をするのは難しかった。950m峰から単純に南下すれば往路の920m鞍部に到着するはずなのだが、現地で目視確認したところ尾根の続きはもっと東側にように見えたので、一度正しい尾根を下り始めたのだが950m峰に戻ってもっと東側から南下したら大ハズレ。顕著な谷に出てしまった。これを下っても往路の林道に出るはずだが、この谷はおそらく往路で流れが出てしまっていた谷だろう。ここは素直に安全策をとって往路の谷へと向かうことにした。

 少し谷を下って尾根に這いあがれる程度の傾斜になってから雪面をトラバースして尾根上へ出てから南斜面を下る。こちらも顕著な谷が出現し、往路ではこの谷の中ではなく対岸の右岸側を登ったはずだ。谷に出ると右岸側は雪庇の壁でなかなか上がることができなかったが、切れ目を見付けてよじ登ると往路の自分の足跡があった。しかし100mも下らないうちに谷の幅が広がって足跡は谷に下っていた。わざわざ右岸に登って損してしまった。

 以降は自分の足跡を辿って林道へ。さすがに下りは楽だが林道に出て傾斜が無くなると足が重くなる。足跡は自分のものだけで他に入山者はいなかったようだ。もう夕方近くで気温は上がり雪の締まりは昨日より無くなっているのであった。途中、カモシカに遭遇したが、あちらも逃げるのに足が潜ってスピードが出ていなかった。

 林道がジグザグる地点は往路同様にショートカット。ここで今回唯一バックで下った急斜面が登場。スノーシューを脱げば前を向いて下れるのだが、下り終わってまた装着するのが面倒なので横着してそのまま下った。杉の植林帯では花粉が飛んでいて目が痒い。

 周囲が開けて明るくなると明星山登山口到着。明るいうちに戻ることができた。でも自宅の帰りの時刻は遅くなってしまう。小谷の道の駅で入浴してから家路についた。


まとめ
 まだ残雪期としては早い時期で雪が落ち着いていなかったが、稜線の雪庇崩壊は無くて迂回などせずに済んだのはよかった。おそらく大型連休には部分的に藪が出ている場所があるだろうが、その時期なら雪は締まってスノーシューは不要となろう。その時期なら帰路は林道で戻るのもいいプランだろう。

 

都道府県別2000m未満山行記録リスト

 

日付順2000m未満山行記録リスト

 

ホームページトップ